福祉用具のレンタル業務に日々携わる中で、制度上は説明しきれない“現場のリアル”というものを実感する場面が多々あります。
その中でも、今回は **「介護ベッド(特殊寝台)にまつわる暗黙の了解」**について取り上げたいと思います。
制度開始当初は「誰でも借りられた」時代だった
今では考えられない話かもしれませんが、介護保険制度が始まったばかりのころ、特殊寝台のレンタルはほとんどの利用者に開かれていました。
「家にベッドがないから、この機会に借りよう」「生活保護の方でも費用負担なく借りられる」といった声も多く、実際にそうしたケースも数多く存在していました。
当時の制度運用は、今に比べてゆるやかだった分、現場としては対応がしやすかった面があるのは事実です。
もちろん、そのぶん無理も効かせられたという背景もあります。
現在の制度では「借りられる人」が限定されている
現在では制度が整備され、福祉用具レンタルの対象は介護度に応じて制限されています。
特に特殊寝台は、「日常生活において、起き上がりや立ち上がりが困難である」といった明確な理由が必要とされ、対象者は以下の通りです。
【注釈】
特殊寝台などの「特定福祉用具」は原則、要介護2〜5の方が介護保険を利用してレンタル可能です。
ただし、要支援1・2や要介護1の方であっても、状態により例外的に認められる「例外給付」が適用される場合もあります。
「明らかに必要だけど制度では認められない」ケースへの対応
現場にいるとわかりますが、実際には要支援や要介護1の方でも、どう考えても特殊寝台が必要というケースが存在します。
このような場合、制度の対象外となってしまった利用者には、自費での対応を提案するしかありません。
ここで浮かび上がるのが、福祉用具対応事業所としての葛藤とジレンマです。
自費対応=“善意”の構造で成り立っている現実
多くの事業所は、制度対象外の方に対しても、身を削るような価格で自費レンタルを提供しています。
なぜかというと、「将来的に介護度が上がれば、制度内でのレンタルに切り替えられる」「その時にスムーズに移行してもらえる」という期待があるからです。
いわば、“後の見返り”を見込んだ上での善意対応。
それが、福祉用具事業所の中では“暗黙の了解”として根付いているところも少なくありません。
この構造自体に制度的な補填はなく、あくまで事業所の裁量と関係性によって成立しているものです。
明日の後編では、この“暗黙の了解”がどうケアマネジャーとの間にすれ違いを生むのか、そしてそこから見える「制度と現場のズレ」について、さらに深く掘り下げていきます。
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