「どのレベルの入居者を施設が受け入れるか?」を考えるポイント

介護経営

老人ホームの入居者受け入れ基準をどう決めるか?

老人ホームを運営する上で、どのレベルの入居者を受け入れるか? というのは、施設の運営方針や経営の安定に大きく関わります。

施設の医療体制や介護体制によって、受け入れられる入居者のレベルを決める必要があり、基準が曖昧なままだと、後々トラブルや負担の増加につながることもあります。

今回は、施設の方向性を明確にし、安定した経営を続けるために「入居者受け入れ基準の決め方」についてお話しします。


1. 受け入れ基準を明確にする重要性

① スタッフ体制とバランスを取る

受け入れる入居者の介護度が高すぎると、スタッフの負担が過剰になり、離職率の上昇やサービスの質の低下につながる可能性があります。逆に、介護度が低すぎると施設の収益にも影響するため、施設の人員配置に合った入居者を受け入れることが重要です。

② 入居後のトラブルを防ぐ

受け入れ条件を事前に明確にしておかないと、「聞いていた話と違う」といった入居後のトラブルにつながります。「どこまでの介護が提供できるのか?」をしっかり説明し、家族やケアマネージャーに理解してもらうことが大切です。

③ ターゲット層を明確にして集客につなげる

施設がどのような入居者を受け入れているか明確にすることで、施設の強みを活かした営業戦略が立てやすくなります。ケアマネージャーや病院のソーシャルワーカーにも施設の特徴が伝わりやすくなり、適切な入居者の紹介が増えることにつながります。


2. 入居者の選定基準を決めるポイント

① 介護度の制限

  • 要支援レベルの比較的元気な方のみを対象にするのか?
  • 要介護3以上の重度者まで対応するのか?

施設によっては、自立~要支援の比較的軽度な方が中心のところもあれば、要介護3以上の方を対象にしているところもあります。 また、認知症の方を受け入れるかどうか、症状の程度(徘徊や暴言・暴力があるか等)によっても基準を決める必要があります。

② 医療対応の必要性

  • 胃ろう・たん吸引・在宅酸素など、医療行為が必要な方を受け入れるか?
  • 夜間の医療対応がどこまで可能か?

施設に看護師が常駐しているか、提携の訪問看護で対応できるかによって、受け入れ基準を決める必要があります。

③ 生活保護受給者の受け入れ

生活保護を受給している方の受け入れ可否も事前に決めておく必要があります。民間の有料老人ホームでは、生活保護受給者の受け入れ枠を設けている施設が少ないため、受け入れる場合は自治体との連携や費用補助の調整が必要になります。

④ 夜間体制と徘徊対策

  • 夜間に徘徊がある入居者を受け入れるか?
  • 徘徊行動が頻繁な場合、職員体制で対応できるか?

認知症の方が夜間に徘徊してしまう場合、他の入居者に影響を及ぼすことがあります。
そのため、施設側で適切な管理ができるかどうかを慎重に判断する必要があります。


3. 施設の経営に与える影響

受け入れ基準を明確にするメリット

施設の方向性がはっきりし、ターゲットが明確になる
スタッフの負担が適切に調整され、職場環境が安定する
ケアマネージャーや病院との連携がスムーズになり、紹介が増える

受け入れ基準を決める際の注意点

基準を厳しくしすぎると、入居希望者が少なくなり、経営が不安定になる
基準を緩めすぎると、スタッフの負担が増大し、離職につながる可能性がある

施設の実態に合った基準を設定し、無理なく対応できる範囲で運営することが重要です。


4. まとめ

施設の入居基準を決めることは、運営の安定化とサービス品質の維持に直結します。
「自分たちの施設ではどこまでのケアが提供できるのか?」を明確にすることで、入居後のトラブルを防ぎ、施設の運営をスムーズに進めることができます。

施設の方向性を決める際は、スタッフの負担、医療対応の可否、認知症の対応レベルなどを慎重に検討し、無理のない範囲で受け入れ基準を設定することが大切です。

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